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絵本でみんなを笑顔に

ー京丹波町「質美笑楽講 絵本ちゃん」谷文絵さんー

JR下山駅からバスに乗って揺られること数分―。バス停から少し歩くと、目的地である「旧質美小学校」が見えてきた。この小学校は、国の施策である平成の町村合併により、町内にある4校を1つの小学校へと統合することをうけ、閉校となった。

 

その後、旧校舎の利用が決まり、現在の「質美笑楽講」が誕生した。その中心人物が今回ご紹介する「絵本ちゃん」のオーナー、谷文絵さんだ。閉校決定時から質美地域振興会の委員であり、活用検討委員のメンバーであった谷さん。絵本ちゃんオープン当初の旧校舎は単発のサークル活動が主たる利用だったが、今では笑楽講の中にpandozo cafe、古道具ケセラセラ、おかきのお店などの店舗があり、質美に活気を呼び込んでいる。

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校内はどこか懐かしい雰囲気を感じさせる、あたたかみのある木造建築。「絵本ちゃん」は2012年の5月5日(子どもの日)にオープンして以来、家族連れを中心に多くの方が訪れている絵本屋さんだ。

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店内に足を踏み入れると、心地よいBGM、部屋いっぱいの絵本が我々を歓迎してくれた。

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谷さんは絵本ちゃんをオープンする前は京都市内の「えほん館」のスタッフとして勤務、質美小学校の図書室の読書指導員もされていたという。現在は絵本ちゃんでの絵本の販売だけではなく、絵本作家さんの講演会での出張販売、絵本関連・子育てイベント、保育施設などでの講師や絵本読み実践、絵本と気軽に出会ってもらうひろばの開催など絵本を楽しんでもらえる機会作りを行っている。

 

「私自身が、まずスモールスタートで出来ることはなにかと考えてみたんです。ずっと絵本に関わってきたので、なにかするなら絵本のことで、という気持ちが強かったですね」と、絵本ちゃんオープンの理由を語ってくれた。

また、京丹波町に公立図書館がなかったのも理由の1つだという。

「絵本や本を身近に感じて欲しい。文化的な情報発信であったり、コミュニティの場が必要だ、と感じていました」。

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のどかな質美の風景

「京都市内よりも子どもの成長によい環境だと思い、夫の出身地である京丹波町質美に子供の小学校入学を機に移り住みました。質美は山間地なので、コンビニに行こうにも5キロ上離れており、徒歩では不可能で、バスか車を使用しなければいけません。ですが全部自分たちで手作りが当たり前の暮らしを目にして、これこそが “豊かな暮らし” だと感じました。ただ、ある意味田舎特有ではあると思うのですが、どこへ行っても見張られているような感じがして気が休まる瞬間がなく、そのような環境に疲れてしまい、ふらっと集まって愚痴をこぼせるような場所が必要だとも感じていました」。

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​旧質美小学校正門
​旧質美小学校の校舎

——旧校舎を活用するにあたって苦労されたことはありましたか?

 

「地域のなかの人には『こんなとこもうあかん』と思っている人も多く、質美地域振興会で立ち上げた旧小学校活用検討委員会の話し合いにおいても、旧校舎の活用はすぐには決まりませんでした。出る杭は打たれるではないですが、旧校舎を活用しようと提案する外からきた私の意見はなかなか聞いて貰えないことが多かったですね。ですが、地域の活動に積極的に参加することで、地域の人との信頼関係を徐々に築いてきました」。

活用方法の提案にあたって、谷さんは周辺地域の小学校の旧校舎活用についても調べていたようだ

「今から15年ほど前に南山城村のとある旧小学校活用の記事を雑誌で見かけ、実際に足を運んでみました。その旧小学校が質美小学校と規模や木造校舎の佇まいがよく似ていたことと、南山城村に比べて京丹波町のアクセスの良さに気付きました。質美の立地が恵まれていることが分かりました。灯台もと暗しとはこのことですね」。

——質美出身ではない谷さんだからこそ、地域の中の人は当たり前だと思ってきづかないような“質美の可能性”を見いだすことができたんですね。

 

「まず自分が楽しく暮らさないと、みんなも楽しくない。自分が好きなこと、やれることをやって、楽しく暮らそうと決めてスタートしました。色んな意見を持つ人たちの代弁者になれたらいいなと思いました」。                                                      

 

——沢山の困難を乗り越え、質美を盛り上げてきたんですね。そうした中でやりがいを感じたのはどのような時でしょうか?

 

「やりがいを感じる時は、質美を出た人たちや卒業生が訪れてくれた時です。『何にもなかったところに、多くの人達が来て賑わっているのが嬉しいです!』と質美出身の若い人が言ってくれました。質美出身の方々にとって、質美出身であることが自慢になっていることが私にとって大きな喜びです。『以前は、盆と正月ぐらいしか帰ってこなかった家族が、この場所が出来てピザも食べられるし、遊べるし、買い物もできるし、よう帰ってくるようになったわ』という話も聞き嬉しかったです。最近は、私のことを知る卒業生がデートで来てくれることも多いです」。

 

——素敵なお話ですね。谷さんはこの場所がどんな場所であってほしいとお思いでしょうか?

 

「若い人たち、質美出身の人たちが気軽に立ち寄り、覗いてくれる場所であってほしいです。また、質美と縁のない方々(地域外のお客様)との交流も盛んになってほしいですね」。

 

現在、谷さんは笑楽講管理運営委員会に所属しており、「絵本ちゃん」の運営のほかに旧質美小学校の部屋の貸し出し管理やイベントの企画運営等の業務を行っている。また、質美地域の社会教育活動の企画運営をする質美公民館の職員としても働いており、日々質美地域のための活動に力を尽くしている。 

 

——最後に、絵本ちゃん、質美の今後の展望についてお聞かせ下さい。

 

「まだまだこれから発展していく可能性は十分にあると思います。地域の人たちはまだ受け身の傾向が強いですが、実行する側に回る人が増えて欲しいです。管理運営委員会には若いメンバーもいて、彼らがメインで活躍してくれるように、継いでもらえるように意思を伝え、活動を共にしています。後継者に繋いでいくことが理想ですが、その為にどうしたら良いのか模索中です」。

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おすすめの絵本、荒井良二著『そのつもり』を持ち笑顔の谷さん

大人は、絵本を幼稚なもの、子どものものと思う人が大半です。でも絵本には限られた文字、絵で表現されていることが沢山つまっています。どんな世界にも行けるのです。絵本は、生の声で読んでもらうに限ります。子どもたちに読んであげるだけでなく、大人こそ、ぜひ生の声で読んでもらって欲しいです」。

 

(取材日:2022年9月22日)

 

【絵本ちゃんの情報】

質美笑楽講(旧質美小学校) 絵本ちゃん 

住所 〒622-0332京都府船井郡京丹波町質美上野43

電話番号 090-2705-8622

営業日 SNSで毎月情報発信

 Instagram      https://www.instagram.com/ehonchan/

 twitter            絵本ちゃん(@23fuming)さん / Twitter

 Facebook      絵本ちゃん | Funai-gun Kyoto | Facebook        

 営業時間 12時~16時

 定休日  月、火曜日(臨時休業あり)

アクセス JR山陰本線・下山駅から桧山行きバスで上野まで6分、上野バス停から徒歩5分

 

【編集後記】

お話を聞かせていただいている中で、地域には谷さんのような熱意と行動力のある人間が必要だと強く感じました。平日にも関わらず家族連れを始めとして多くの方々が訪れており、質美笑楽講は時間を掛けてでもわざわざここに来たいと思えるような場所であるとともに地域の憩いの場としての役割も果たしていることが分かりました。(尾畠)

 

地域への愛と熱意に溢れる谷さんに感銘を受けました。地域の方々が立ち寄れる居場所を作り、人の心を動かす仕事は素敵であり、地域活性化に大きな影響を与えていると思いました。まちを作るのは人であるということを今回の取材で改めて感じました。(折原)

 

小さい頃はたくさん絵本を読んでいましたが、年をとるにつれて自然と読まなくなっていました。絵本ちゃん店内の素敵な雰囲気と谷さんの優しくも情熱的な人柄に触れて、改めて絵本のよさを再確認できた気がします。また、他のお店もいくつか訪れてみて、お店だけでなく、お店を営んでいる方の人柄に惹かれて、会ってお話することを目的としていらっしゃっている方もいそうだな、と思いました。(佐竹)

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