お茶から村を笑顔に
-道の駅 お茶の京都みなみやましろ村・森本健次さんー
皆さんは、南山城村をご存知だろうか?聞いて驚くかもしれないが、南山城村は京都に唯一残った「村」である。そしてなんと…!実はあの有名な「宇治茶」を支えるお茶の銘産地なのである。
京都府南東部に位置する南山城村に2017年にオープンした「道の駅 お茶の京都みなみやましろ村」。南山城村に息づくモノ、コト、その魅力を全国の皆様に知っていただくべく、言わば村の情報発信基地として誕生した。

道の駅の最寄り駅、JR月ヶ瀬駅
道の駅にお邪魔すると、平日のお昼時から夕方まで、お店は多くの人で賑わっていた。こちらの名物である「むらちゃプリン」「村抹茶ソフトクリーム」を目当てに訪れているのである。「茶どころの余裕」というキャッチフレーズに象徴される、南山城村の抹茶をふんだんに使った、見た目にも味にも濃い抹茶スイーツが味わえる。その場で食べても、お土産として持って帰って食べても、南山城の美味しい味を堪能できるのが魅力あふれる品々だ。

村抹茶そば(単品)750円

村抹茶ソフトクリーム 430円
この道の駅の立役者が森本健次さん(55)だ。南山城村役場で約30年間公務員として働いておられたが退職し、現在は株式会社南山城の代表取締役として道の駅の経営をして、村の活性化に尽力しておられる方である。

森本健次さん(写真は森本さん提供)
「どうしても行政の仕事は、外部に委託することや,一過性のイベントを企画することで止まってしまう。また、民間の方と同じ立場での話し合いもしにくい」。
森本さんは役場在職中、役場の内部からは「もう打つ手がない」という声が多い中、道の駅設立にむけて農家の方々との協力関係の構築と商品開発に尽力してきた。そんな中、JAの方々からは「お茶は売れない。売れるものなら売ってみろ」とまで言われたこともあるという。しかし・・・
「やってみないと分からない!」。
南山城のお茶は、ブレンドが強みの宇治茶とは異なり、農林水産大臣賞を受賞するなど「個の強さ」がある。そして、森本さん自身が公務員時代からお茶農家やメディアとの関わりを深めていたことを、南山城のお茶をふんだんに使った商品開発や道の駅のプロモーションに活かした。
「村は社会問題の先進地。少子高齢化や過疎など様々な問題を抱えている。10数年前はニュースで報道されるとしたら、汚職などと暗いニュースばっかり。村に明るいニュースをもたらして、活気づけるために道の駅をはじめました」。
ニュースといえば、2022年4月に、道の駅お茶の京都 みなみやましろ村の買い物客の累計が200万人を突破したということが報道された。森本さん曰く、コロナ禍で逆に売り上げが伸びたそうで、都会の混雑を避ける人々の行動や、リベンジ消費が背景にあるのではないか、とのことだ。
——ファンやリピーターを獲得する秘訣は何ですか?
「商品のクオリティだけでなく、人を大切にしています。お客さん一人ひとりとコミュニケーションをとって顔見知りになる。きっと、これを積み重ねていれば、味方になってくれる人はたくさんできます。店員それぞれのキャラクターをお客さんに気に入ってもらうことで、誰々がいるから道の駅に寄ってみよう!と思われるようになるのが理想ですね」。
社長である森本さんも自ら店に出て、お客さんに商品の説明をすることが多い。実際に、お土産を手に、森本さんや店の人に会いに来るお客さんもいるそうだ。
道の駅の役割は様々だ。ファンやリピーターを増やし、継続的に道の駅にお金を落としてもらい、村を潤わせることもその一つではある。しかし、お客様にとってプラスになるもの・サービスを届けるとともに、それを支える地元の人にとっても道の駅はプラスになることがあるという。例えば、村のおじいちゃん・おばあちゃんが自分たちの作った野菜を出荷に来てくれることである。森本さん曰く、
「例えば道の駅で1束100円の野菜が10束売れると1000円の売上げになる。少ないと思いますか?少ないと思うかもしれませんが、それが30日積み重なったら、1か月3万円の収入が生まれます。年金で暮らすお年寄りにとっては、プラス3万円が暮らしの足しになるし、孫にお菓子やおもちゃを買ってあげるこができたり、何より野菜が今日は売れた、売れなかったかと毎日頑張ることは、おじいちゃん、おばあちゃんにとって生き甲斐になると思っています。そして、こうした生き甲斐が健康寿命を延ばすことに繋がればいいなと思います」。
道の駅に立ち寄った時、「村民百貨店」(道の駅のなかの食料品や日用品など地元の人たちの暮らしに必要なものを取り揃えているスペース)の中で「おかんの弁当」という商品を見つけた。お茶とは異なるジャンルであるが、お弁当にも工夫が施されており、南山城村のあたたかみが感じられた。ここにも何か特別な意味があるのではないか、そう思った。
——「おかんの弁当」という商品は、どのようなきっかけで商品化されたのでしょうか?
「もともとは、村のお年寄りに向けて弁当の配達ができないかと始めました。でも、それよりも先に奈良市の学童保育から「お弁当を届けてほしい」と依頼が来ました。その後村の中でも、仕出し屋に頼むように、人が集まるときに「〇〇円ぐらいの弁当」というように頼んでもらうようになったりして、徐々に村の中で認められるようになりました」。
高齢化が深刻になっている村で、今後は高齢者にもお弁当や食料品を届けていきたいとおっしゃっていた。
——最後に、オープンから7年目になる来年への意気込みを教えてください。
「形のある商品だけでなく、もっと“体験”を提供したり、お茶の販売戦略になるようなことをしていきたいと考えています。現地の食材を使って、お茶づくりという生業を支えてきた食文化に触れる体験や料理教室などを活発にできたらと思います。また、今は客足が好調ですが、油断せず、どのようにすれば商品がもっと売れるのかという意識や、お客様を大切にする心をスタッフ一同大切にしたいと思っています」。
(取材日 2022年10月22日)
【お店の情報】
道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村
ホームページ https://michinoeki.kyoto.jp/
住所 〒619-1411 京都府相楽郡南山城村北大河原殿田102
電話番号 0743-93-1392
営業時間
道の駅/ 9:00~18:00
のもん市場(野菜、お土産) / 9:00~18:00
村民百貨店(生活用品) / 9:00~18:00
つちのうぶ(食堂)モーニング /平 日 8:00~10:00(Lo 9:30)
/土日祝 7:30~10:00(Lo 9:30)
ランチ / 11:00~16:00(Lo 15:30)
村茶屋(ファストフード)/ 9:30~17:00
定休日:6月第3水曜日・12月第2水曜日
アクセス
電車でお越しの方
JR月ヶ瀬口駅より徒歩10分
相楽東部広域バスでお越しの方
JR加茂駅から相楽東部広域バス乗車 約40分(当駅内にバス亭有)
JR月ヶ瀬口駅から相楽東部広域バス乗車 約3分(当駅内にバス亭有)
駐車場について
普通車:76台
身障者専用:2台
大型車:15台
第二駐車場:普通車40台
【編集後記】
中山:オープン当初から関心を寄せていて、よく通っている道の駅なので、今回お話を聞かせていだけたことが何より嬉しかったです。当初は無理だろうと言われていた南山城のお茶を軸として、目玉商品を作り上げるまでの経緯や、道の駅の運営に留まらず、村の維持・発展に取り組まれていること等、印象深いお話で新たな気づきを得られました。“地域活性化”という言葉はよく耳にする言葉ですが、それを体現している方であると実感しました。また、今後自分自身の研究でさらに深めていきたいテーマになりました。
岡野:地域のお茶や食材を使った料理を味わえるうえに、人との関わりも大事にしている道の駅は、とても居心地が良くて温かさを感じました。また、森本さんから貴重なお話をたくさん聞くことができ、地域おこしについて改めて考えさせられる良い機会になりました。この経験を、必ず卒論や将来の進路選択に活かします。また、取材とは関係なく、リピーターとして訪れたいと思います。
