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「ヨソモノ」の力で地域を活性化
ー元笠置町地域おこし協力隊員・藤田始史さん-

 京都府最南端、ボルタリングができるアウトドアで有名なまち、笠置町を拠点にまちづくり活動をしている藤田始史さん(41)を紹介します。藤田始史(ふじたもとし)さんは、元地域おこし協力隊員で一級建築士です。
 藤田さんが笠置町でまちづくり活動を始めたきっかけは、2017年に特産品の販売等の営利活動を担う地域のまちづくり会社を運営する人材を求めていた笠置町役場から声がかかったことでした。2012年に笠置町にあるフジタカヌーさんのイベントのお手伝いをしたことから笠置町との出会いが始まり役場から声をかけられるにいたりました。そして2017年5月から2020年3月までの3年間地域おこし協力隊員として笠置町でまちづくり活動をすることになったのです。
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藤田始史さん(写真:本人提供)
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笠置まちづくり株式会社チャレンジ・ショップ店内の様子
 藤田さんの実家は和歌山のみかん農家で、祖父母は藤田さんにみかん農園を引き継いで欲しいという思いを寄せていたそうですが、藤田さんは建築家になるという夢があり、京都の大学で建築の意匠設計やデザインを学んだ後、その夢を叶えました。しかし実際に働き始めると激務に追われる日々が続き、自分のやりたいことは何か見つめなおした結果仕事を辞めることにしました。その後地域おこし協力隊員に就任しそこで人との繋がりができて地域での活動をやめられなり、協力隊員を退いてから後も、笠置町に通い続けているといいます。
 まちづくりに関して、文章を書くコンサルタントよりプレイヤーになりたかったという藤田さん。プレイヤーとして実際にどうアプローチするかが楽しいといいます。現在はコンサルティング会社でアルバイトをしながらいろんな知識を吸収して、学んだことを生かして自分でやりたいことを笠置町で実践しています。現在は、コンサルタントと個人の仕事と専門家派遣の三つの財布で生計を立てています
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藤田さんが売り出している京都笠置炭酸サイダー
 これまで実際にプレイヤーとして、地域のお祭りを復活させたり、特産品の開発をしたりしてこられました。笠置町はいわゆる半農村半都市で、畑がある関係で横のつながりがある一方、サラリーマンも多くて横のつながりが希薄な層があるためコミュニティが分断している状況にあります。そんなまちでコミュニティを形成するには「よそもの」の存在が鍵になるといいます。藤田さんはまちづくり会社で「よそもの」として存在をアピールしていきました。
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藤田さんが大学生と共同で改修した空家
 藤田さんが地域で活動を始めてから、町の人も自分のブランドを作ったり、販路を自分で開拓したりするようになっていきました。藤田さんは「まちづくりの成果は実際に目に見えるものでないけれど、自分のしたことの何かが影響していろんな人がいい方向に変わるきっかけになれたらいい。空き家を改修するような目に見える地域活性化ではなくて地域の人の意識が変わることが大事だ」といいます。
 


 藤田さんはまちづくりを学問として学ばれた経験はありません。藤田さん自身は建築家として町の建物のことが分かるという強みをもっていますが、どんなバックグラウンドを持っているかによって同じものを見ても人それぞれ考える課題は違ってくるといいます。

そのため藤田さんは、まちのみんなで目指す街全体の方向性、つまりまちへの意識が一致すればうまくいくという考えのもとで、地域住民の合意形成と住民発意のイベントを重視する「ファシリテーションまちづくり」を大事にしています。

 

 取材の最後に、まちづくりに取り組もうとしている学生に何かメッセージをお願いしたところ、意外な答えが返ってきた。「まちづくりは、みんなが思っているほどキラキラしているものではないので、おすすめはしない。やりたいからやるというのではなくて、誰かがやらないといけないからやるような感じ。大変だし、地味なことは多い」と、藤田さん。

 

 

 地域活性化はイベントの実施など華やかなイメージがありますが、収益化が困難であること、キャリアアップが不透明であること、“やりがい搾取”の横行など、地域活性化を仕事にするのは大変だといいます。それでも藤田さんは困っている地域を助けたいという思いを持ち、さらに今後はまちづくり活動を会社化して地域の人を雇用することを目標に活動を続けていきたいといいます。今後のご活躍を注目していきたいと思います。

(取材日:2021年8月11日)

【取材後記】
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お話を聞いて、まちづくりに対する印象が変わりました。まちづくりは、理論的にこの手法でやればうまくいくというものではなく、人とのつながりや地域の人の意識の部分にどうアプローチするのかが重要だと思いました。藤田さんの人柄の良さやまちの課題を自分事として捉え解決していこうとする姿勢が、地域の人を引き付けて一緒にまちをよくしていこうという意識をつくりだしていくことにつながっているのかなと感じました。(小森)
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藤田さんに短いお時間でしたがインタビューさせていただいて、想像していた人物像を良い意味で裏切られたと感じた。生まれ育った場所でもないまちで、活動されていらっしゃる方なので、さぞかしまちづくりに本気で向き合っている方なのかと考えていましたが、もっとフラットな感じで取り組まれていることには驚きました。そういったスタンスの方だからこそ、地域おこし協力隊の期間が終了しても高い頻度で笠置に行かれ、活動をなさっているのだと思います。まちづくりに一生懸命に取り組むことも大事ですが、それ以上にまちに入り込み地域の方と頻繁に関わっていくことが大切なのだと感じました。(助野)
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